認知症の親名義の家、家族の委任状で売れる?成年後見と裁判所許可の分かれ目

沖縄の空き家の室内と玄関

親が認知症と診断され、施設へ入った。空いた沖縄の家を売るため、家族が委任状を書いて手続きを進めてもよいのでしょうか。

家族という立場だけでは、親名義の家を売る権限は生まれません。

最初に確認するのは診断名ではなく、本人が売却の意味、価格、売却後の生活への影響を理解し、自分で判断できる状態かです。判断能力が十分なら本人が売主として進めます。不十分で有効な授権が難しい場合は、成年後見などの代理権を整理します。

なお、成年後見制度を見直す改正法が2026年6月に公布されましたが、成年後見に関する改正は2026年8月時点で未施行です。本記事は、今売却する場合の現行制度を前提にしています。

認知症の親名義の家を本人の判断能力と売却権限で整理する図
診断名だけで決めず、本人の理解と売却権限を分けて確認します。
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「認知症だから売れない」でも「家族なら売れる」でもありません

不動産売買は、売却価格や引渡し条件を理解し、その結果を判断する契約です。民法は、意思能力を有しない間にした法律行為を無効と定めています。

一方、認知症の診断がある人の判断能力は一律ではありません。契約の内容や複雑さ、本人の状態、契約時点の説明と受け答えなどを個別に確認します。

家族が本人の代わりに説明へ同席することはできます。しかし、名義人本人が内容を理解できず、有効に代理権を与えられない状態なら、その場で新しい委任状を作るだけでは解決しません。

本人が判断できるなら、売却の中心は本人です

本人が売る理由、価格、手残り、住まいへの影響を理解できる場合は、本人を売主として手続きを組みます。

説明は一度に詰め込まず、査定書、費用表、売却後の資金用途を短い資料に分けます。不動産会社、司法書士、医療・福祉の支援者が必要に応じて情報を共有し、本人の意思を置き去りにしないことが大切です。

ここで家族の都合だけを先に決めると、あとで契約の有効性や売却代金の管理が問題になります。査定はできますが、契約を急がない線引きが必要です。

判断能力が不十分なら、後見人等の権限を確認します

法務省の現行制度では、判断能力の程度に応じて後見、保佐、補助があります。成年後見人は本人の財産を管理し、法律行為を代理します。保佐人・補助人が不動産を売る場合は、その行為について代理権が付与されているかを確認します。

家族が申立てをしても、希望した家族が必ず後見人等に選ばれるとは限りません。家庭裁判所が本人の事情や利益相反の有無などを見て選任します。

また、後見制度は家を売るためだけの名義貸しではありません。選任後は、売却代金を本人の財産として管理し、裁判所への報告など継続した職務が生じます。

施設入所後の元自宅も、裁判所の事前許可が必要です

成年後見人等が本人の居住用不動産を処分する場合、家庭裁判所の許可が必要です。

ここでいう居住用不動産は、本人が今住んでいる家だけではありません。施設へ入る前に住んでいた家や、将来戻る可能性がある家も含まれます。売却だけでなく、取り壊し、賃貸、抵当権設定なども「処分」に含まれます。

裁判所の許可を得ずに処分した場合、その処分は無効です。買主が決まってから慌てるのではなく、査定と売却の必要性を先に資料化します。

成年後見人等が施設入所後の元自宅を売る前に確認する順番
許可申立てには、売却の必要性、査定、契約条件を具体化した資料が必要です。

先に査定を取り、売却の必要性を数字にします

家庭裁判所の案内では、居住用不動産の処分許可申立てに、処分の必要性を示す資料、契約書の写し、評価証明書、不動産会社の査定書、登記事項証明書などが挙げられています。

そのため「許可が出るまで何もできない」わけではありません。先にできるのは、次の整理です。

  • 土地・建物の登記名義と抵当権
  • 固定資産税、管理、修繕、保険の年間負担
  • 本人の施設費や今後の生活費
  • 現況のまま売る場合と、片付け・修繕後の手残り
  • 複数の査定と、その価格になる理由

沖縄では土地価格が上がっている地域もあります。認知症や施設入所を理由に、急いで安く売る前提にするのではなく、本人にとって必要な売却か、価格と条件が妥当かを説明できる形にします。

契約より先に、本人・権限・許可の3点をそろえる

認知症の親名義の家は、物件の状態だけを見ても売却できるか判断できません。

本人が契約できる状態か。代理する人に売却権限があるか。元自宅なら家庭裁判所の許可が必要か。この3点を、買主との契約前にそろえます。

「委任状があるから大丈夫」と決めつけず、本人の意思確認と権限書類を司法書士や弁護士へ早めに共有してください。

売れる価格と、売れる手続を同時に整理したい方へ

まぶい不動産では、施設入所中の家や管理が難しい家について、現況査定と売却条件を整理します。成年後見の申立てや居住用不動産処分許可の法律判断は、家庭裁判所、司法書士、弁護士などの専門家と連携して進めます。

登記事項証明書、固定資産税通知、施設費が分かる資料、家の写真があれば、本人のために売る必要性と、現況のまま売る場合の手残りを比べやすくなります。

参考資料

この記事を書いた人

田端 宰のアバター 田端 宰 まぶい不動産代表

まぶい不動産代表|訳あり不動産の専門家
5年間、法律事務所の相続分野での経験をもとに、「住まいの再出発」をサポート。沖縄の相続によって空き家になってしまった不動産を中心に、他社が敬遠する困難な現場の原状回復における責任者を務める。現場で培った知見をもとに、訳あり不動産に関する法的な注意点について解説。不動産価値の毀損を最小限に抑える独自のサービスを展開。特殊清掃から、空き家の売却活動まで一気通貫したサポートを行なっている。

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